日立は家電の音響部門にLo-Dというブランド名を付けてオーディオ(音響家電)に足跡を残したが、自社製品のカートリッジは成功していない。人気を博したのはOEMを受けて世に出した機種ばかりになった。逆に、OEMを育てたと言い換えてもよいかもしれない。
カートリッジではGRAMZからのOEMであるMT-23やMT-24が音の良いカートリッジとして知られている。MT-23は今聞いても最新のMMカートリッジに遜色ない音を聴かせてくれる。私はMT-24のチャーミングなクランプデザインが気に入っている。レコードカートリッジは音が良いことに越したことはないが、レコード盤に針を載せるときに自然に目がいく「針ノブ」のデザインや色などの「ルックス」も重要だと思う。可愛らしいカートリッジからいつもながらの音が出てきた時の充足感は「癒しの時間」とスタートにふさわしいものだ。
MT-23は普及価格帯プレーヤーに付属されていたカートリッジで、オークションにも多数出品さている。GRANZからのOEMで、高音質だったことから形や名称を変え長く市場に供給されたものの一つだ。
Lo-Dのオリジナルヘッドシェルとの組み合わせ、スペーサによって防振するととても良い音が出てくる。
MFS-170/171の2機種はaudio-technicaのAT-6の日立ヴァージョン。まだ圧電型カートリッジが主流の時代に、高級なMM型のAT-6は丈夫で扱いやすいため、音響メーカー各社がこぞって採用し、それぞれの名称で販売したことから、交換針メーカーから「共通交換針」という概念が登場し「MM-1」という交換針ナンバーも生まれた。
モノラルLPがまだ大半だったためモノラルLPの再生時のバランスを重視した設計となっているので、使い勝手が良い。
MT-24のヘッドシェル一体型カートリッジ。ヘッドシェル一体型はシェルやリード線交換による音いじりができないため不人気だが、音質的にはメリットが大きい。
本品も一体型の良さが出て、昆変調歪や不要共振による付帯音が排除され、見通しのよさが加わり、スケールの大きな音楽に堀の深さがプラスされた印象だ。
MFS-250はMFS-171を小型化、カンチレバーや針先を軽量化して高域特性を改善したもの。
モノラルからステレオに変わる時代にステレオ専用の設計となっている。
1960年代後半のステレオ黎明期のLP再生で真価を発揮する。時代の音楽への志向を感じることができるカートリッジである。
MT-30はaudio-technicaからのOEMで、VM型カートリッジの明るく聴きやすい音が楽しめる。
この形のクランプ(ノブ)はよく見受けられるが、それもそのはず。音質が好まれたことから日本の各メーカーかこぞってOEM採用していた。交換針が容易に手に入るのがありがたい。