DENONは、DL-103を中心に日本のFM放送を牽引したカートリッジの雄


DL-8

 DL-8はGRANZと共同開発(OEM)のMMカートリッジ。レコードプレーヤーの付属カートリッジに飽きたころ、手ごろな価格で元気な音が評判のこのカートリッジが人気を博した。このGRANZのシリーズはLo-DのMT-32、VictorのZ-1sに発展・展開し、高音質カートリッジの系譜として2015年頃まで市場にあった。

 DL-8の初期ヴァージョンは無垢のダイヤモンドブロックから削り出した針先を持っていたので、時々オークションで出る。製造されてから60年だがこれが素晴らしい音を聴かせてくれるからすごい。

DL-80

 DL-80は針先交換型MCカートリッジである。MC型はこう解像度広帯域の高級品だが針が交換できないのが大きな欠点だった。MCの高音質を生かしつつ発電機構も同時に交換してしまう「交換型」MCカートリッジが各社から発売された。これはそのDENON版だ。

 発電コイルの巻き数を多くして磁器回路を強化し、MMと同程度の出力電圧を出せるようにしたことで、MC対応のない普及型ステレオ装置でもMCカートリッジの音が楽しめるというのが宣伝文句だが、あまり成功しなかったようだ。

 

DL-110

 DL-110は高出力型のMCカートリッジ。DL-80で普及型のステレオ装置でもMCカートリッジを使いたいという市場があることから、本格的な高出力型MCカートリッジの開発に着手。このDL-110はその完成系といってよいモデルだ。
 ワインレッドのボディとDL-300系と同型のシルエットは高級感があり、黒いヘッドシェルとの相性も良く見て美しいカートリッジである。MCの繊細さを生かしながら出力電圧を上げ、MMポジションの高インピーダンス入力でも性能を発揮できるよう工夫されている。



DL-103

 DENONを代表するMCカートリッジがこのDL-103である。1966年発売以来現在まで改良を加えながらずっと標準カートリッジの座に君臨した日本の誇るべき銘品。

 NHKとの共同開発で、音楽放送のレコード音楽はこのカートリッジによって収録された。日本のオーディオ文化の大本的な存在であるこは今も変わらない。

 低域から高域まで平坦な特性で、無理に広帯域を狙わず、音の個性を出さないことがこのカートリッジの強烈な個性である。

DL-103M

 DL-103をベースとした改良版。DL-103の無色透明な個性とは異なる個性を付与した多くのタイプが次々に登場した。

 このDL-103MはCDの高音質を追い越す性能をアナログレコードで追求しようと開発された高性能MCカートリッジ。

 アモルファス・ボロンカンチレバーや空芯枠による発電系の軽量化によて高域を60KHzまで伸ばしたもので、ボディも独特のクロススクラッチ模様で、近代的な印象となった。

DL-303

 DL-303は300シリーズの最高級品の位置づけで、針先~カンチレバー~ダンパー~発電コイルを当時考えられる最高の素材と技術で作り上げたカートリッジ。

 再生帯域は20Hzから70KHzにおよび、同時代のカートリッジで最も広帯域となっている。ボディは象牙を思わせる硬質樹脂で、音質はどこまでも透明で堀が深く、くっきりとした音像や響きの美しさなど、どれをとっても文句なし。ただし古いレコードには注意。針が飛ぶ。