EMPIREのカートリッジ


 EMPIREはMM型の特許侵害にならないように磁器回路を工夫してMI型カートリッジを開発した。可動鉄片型とでもしたらわかりやすいか。EMPIREのカートリッジは私が若いころは超高級品でとても手が出なかった。今はいい時代である。かつての憧れ?のカートリッジがヤフオクなら年金暮らしのお小遣いで手に入る。しかし問題は針先がダメなものが多ため一仕事必要となった。これが修理を始めたきっかけともなったので、ここに写っているものの多くは針先修理品である。

 左から、EP-10(SANSUIにOEM)、1000ZEX、2000、2000E/Ⅱ、4000、4000D/Ⅱ、Pro-1、BC-ONE。針先は0.2x0.8milの特殊楕円が多く、エッジが効いた立ち上がりが早く、MM型(本機はMI型と称しているが基本はMMと類似)らしからぬ一線を画す音と評判だった。2000と4000D/Ⅱがオリジナル針であったため、EMPIREの音を聴くことができた。評種強く電圧がやや低めであるためボリュームを上げて聴く。ダイナミックレンジが広く、蒸気機関車の連結部分から発する重量感のある衝突音や地響きを立てて通り抜ける様子が実にリアルに迫ってくる。音の輪郭がくっきりとしていて臨場感が素晴らしい。それでいて空間の広さも感じることができるのはMCカートリッジに負けない表現力だ。音楽を聴くというよりは「音を聴く」方向に意識がもっていかれるので、これぞというときに使う。

 EMPIREの4000D/ⅢはSHUREのV-15/Ⅲ、ELACのSTS-455Eと並んでMMカートリッジの人気Top-3の一つだから大切にしたい。


EP-10

 SANSUIにOEMされていたことから比較的入手しやすかった。日本家庭の音響装置に合わせたコストダウンと音作りになっているようで、EMPIREのエッジの効いた音から大人しい方にシフトしている印象。

 従ってEMPIREらしさはあまりない。

1000ZE/X

 写真の左側はオリジナル針、右は折れ針を修理したものだが、針の性能の違いが音に出る。オリジナルの方が断然良い。透明感、スケール感、臨場感など全て一枚上。それでも修理品もちゃんとEMPIREの音になっているのが嬉しかった。

2000シリーズ

 左が2000E/Ⅱ、右が2000。2000は0.7mil、E/Ⅱは0.2x0.7

milの特殊楕円だから写真の針は入れ違いになっている。

 これを聴き比べると針の違いが音に良くあらわれる。

 2000は針圧を多めにして多少荒れたレコード盤でも聴ける仕様になっている。

Pro-1

 Pro-1は放送局用の重針圧型で、針先は0.7mil円錐、高域も20KHzと凡庸。状態の悪いレコードでも針飛びなどを起こさず確実にトレースして音楽を奏でるといった機能を重視したカートリッジだ。神経質なところがあるEMPIREですがこれは気楽に使える。