EXCELサウンドはカートリッジ専業メーカーで、日本の音響家電メーカー各社に量販型としてOEM供給していたため、カートリッジとしての評価はほとんどされていないものの、非常に質の高いカートリッジを自社ブランドで市場に出していた。
ES-70シリーズが代表だが、日本の昭和歌謡曲の多くはEXCELのカートリッジから人々の耳に届いたことを考えると、とても興味深い。
試聴して感じることは、50年経ってもほとんど劣化せず、新鮮な音楽をLPレコードの音溝から引き出してくれることである。とにかく安心して使える。オールマイティのスーパー汎用カートリッジなのだ。
私は最近までEXCELがこのように日本の音響家電にOEMでカートリッジを供給していたことを知らなかった。こうしてカートリッジを集め始めてからである。当然他の多くのカートリッジと聴き比べることになるのだが、EXCELのカートリッジは個性を主張しないところが個性なのか、この一群の存在に気が付かなった。実にいぶし銀のような、地味だが本質を失わない確固とした存在だと思う。
苦労して手に入れたEX-70E。未使用に近いもので、エージングに少々時間を取られたが、徐々に本領を発揮、スピーカーから余分な音が取れていくような印象だった。
小編成の楽曲を上手に録音したレコードは驚くような透明さがあり、目の前で演奏されているような臨場感が出てくる。
MCでなくても、MMカートリッジでも十分だと納得させられてしまう。
EXCELはOEMの個体ばかりでなかなかEXCELの商標が付いた「ご本家もの」が出てこないので、この3本は貴重品。
率直な音作り。平坦な周波数特性、適度の伸びた低域と高域、特徴がないのが特徴とでも言いたげなカートリッジである。
日本の昭和歌謡曲にピッタリのカートリッジだと思う。
東芝にOEMし、C-210となったが音の性格はES-70とよく似ている。
音楽がしつこくならないというか、さらっと聴ける心地よさがある。有線放送でこのカートリッジが重用された理由がこのあたりにありそうだ。
飲み屋で粘っこい音楽は聴きたくない。サラリと涼しげに流れていく演歌に涙を流した人も多いのではないか。