ELAC・・・エラックと呼んでいるカートリッジ群。ドイツのキールに本社を置く音響メーカーで、創業当時は潜水艦のソナーを手掛ける企業(Wikipediaより)から戦後レコードプレーヤー「ミラコード」で成功し、カートリッジ、スピーカーシステムなど高級オーディオシシステムを製造販売している。
私が若いころに店頭で聴かされたELACのカートリッジの音に魔法をかけられたように大枚をはたいてSTS-455を購入、我が家の貧弱なシステム(ありあわせのスピーカーと自作アンプ、プレーヤーはリムドライブの安物)でも「ドイツの音」のような感じがした。就職後それなりのシステムになりこのカートリッジがお気に入りとなった。もはや宗教のような話で技術者の私でも説明できないが、好きな音である。落ち着く。じわ~とくる。バックハウスか、フルトヴェングラーとか、アルヒーフのレコード最高!!・・・古い録音でもよい音になったような気がするから不思議だ。
ELACのカートリッジは特性の測定値が芳しくない。他社と比べると明らかに見劣りするのだが、音が違う。低域も高域もそんなに伸びていないはずなのにちゃんと聞こえる。レコード盤から「音」ではなく「音楽」を奏でるところが魅力のカートリッジ群である。
455シリーズの前のもの。音の出方はおっとりとしていて少し遠くで鳴っているように感じる。
弦楽四重奏曲など、現代的な響きのアルバンベルクSQは聴き疲れする音源の一つだが、このカートリッジにかかるとまろやかになり、リラックスできる。
いわゆるハイファイとは一線を画す音であり、音楽を楽しむアイテムである。
ELACを有名にした名作カートリッジ。
このカートリッジは音楽の音を聴くというより、自然に音楽の心や魂を感じる聴き方になってしまう。今やオリジナルの針が手に入らないので、当時の音を再現できないのが残念だが、雰囲気は大いに楽しめる。
人間は面白いもので、脳が記憶を頼りに足らないところを補正して聴こえたことにしてしまうらしい。
455より一つ上のランクのカートリッジ。私の友人がロックを聴くなら555が一番と言っていた。どうやら音楽の熱をこのカートリッジが再現しているらしい。
このような不思議な都市伝説がいくつも語られるカートリッジは他にないだろう。
オリジナル針はダンパーがかなり怪しい。JICOの交換針の方が良いように思う。