LPレコード黎明期を支えたMMカートリッジ

 これはaudio-technicaから日本の音響メーカー各社にOEM供給されたAT-6です。各社夫々名称を与えたもの、あるいはAT-6とそのままの名称のものもある。1960年代は電蓄ブームで、高級オーディオ機器のベルトドライブレコードプレーヤーに、付属MMカートリッジとして広く採用されていた。
 電蓄のクリスタルカートリッジとは比較にならない、深い響きと広いダイナミックレンジ、豊かな低音と美しい高音は、一度レコード店の店先で聴いて虜になった。稼げるようになったらちゃんとしたステレオセットを買いというのが私の夢だった。
 学校の放送室には良いレコードプレーヤーがあった。音楽や音響に詳しい先生もいた。いつかは放送室にあったプレーヤーやカートリッジを購入して、自分の部屋で聴きたいと思った。

 最近AT3600タイプのものが国産カートリッジとして市場に再登場している。カーボンファイバーのカンチレバーを謳っているが、音質的には昔のアルミカンチレバーの方が断然良いと感じる。製造コストを下げるため生産ラインの作業性を重視したことでようやく市場に復帰したというのは邪推だろうか。それでもレコード音楽新入生にとっては有難いカートリッジであることは間違いない。


意外と難しいAT-6系カートリッジ、ヘッドシェルとの相性がある


オーバーハング不足

 カートリッジの先端が前に出ないため、弁当箱型のヘッドシェルでは前壁よりカートリッジが前に出ないため、オーバーハング不足となる。この写真のセットでは5mm不足となる。しかしそれがどうした?と言いたげにちゃんと音楽が聴ける。

高さ不整合

 このセットはオーバーハング不足に加え、カートリッジの高さ(廃先の位置に注目!)も合わない。もう少し高い位置に針先があるとよいのだが、これ以上調整できないのが残念。カートリッジに実力を発揮してもらうヘッドシェルを選びたい。

これなら何とか合格

 もう少し前に出したいが誤差範囲内に収まっている。ヘッドシェルのゴムリングを厚めの1mmのものに交換するなどあと一歩詰めることができる。この位置の取り付けられレば何とか合格。いっそのこと、ヘッドシェルの前壁を削ってしまうか。

一度試してみたい(2024加筆)



audio-technicaが世界に誇る、VM型カートリッジ


AT-10G

 1970前半から2010年ころまで市場にあったロングセラーカートリッジ。明るい音色で聴きやすい。

 10Gを初めて聞いたとき、緑の針ノブが印象的で、音も初夏の夏山を連想したことを懐かしく思い出す。

AT-120E

 1980年代を代表するカートリッジ。CDに対抗したPCM録音の高音質LPの良さはこのクラスで聴けるようになった。

 ここからAudio-Technicaは高級路線に邁進し、貧乏人には手の届かない所に行ってしまったと感じた。

AT-150E

 1980年代のMMカートリッジの高級品。高級なカンチレバーと針先でLPレコードの音の深さをよく再現する。

 AT-150は高級針も追加され、最高級MMカートリッジとして賞用されたが、私には高嶺の花だった。

AT-3600

 各社にOEMされたVM型カートリッジ。廉価版プレーヤー付属で海外にも多く輸出され、その後海外から逆輸入品が流通。

 この針ノブの形、最近国産として市場に再登場した。

 防振処理されたカーボンファイバーのカンチレバーだが、前のアルミの方が音は良かった。