久しぶりにLPレコードを聴きたいと思ってカートリッジを取り出したら不注意で落としてしまいました。運悪く肝心な針先が折れてどこかに飛んで無くなっていました。仕方がないのでYahooオークションで中古カートリッジを購入するとこれまた針先が折れているではありませんか。結局新品を購入したのですが、ホームページを調べていると折れ針の治し方が紹介してありました。ものは試しと思い、古い針で実験してみると意外にも上手くいきました。これに気をよくしてオークションでジャンクカートリッジを落札し、色々試してみると、50%程度の確率で折れ針の修理ができるようになりました。これが結構面白く、ついには趣味のようにハマってしまいました。
修理できたカートリッジでお気に入りのLPをかけるときはとても気分がよく、音質の違いやカートリッジの個性もわかります。ヘッドシェル、リード線、止めネジ、スペーサ、コネクターの防振リングなど、音質調整のアイテムも増え、面白さが倍増です。
MCカートリッジは針が折れてしまったら新しく買い換えるしかないと諦めていませんか?
MMカートリッジの場合でも、交換針が入手できない機種もります。
これらのカートリッジは、機種や折れ方によっては修理が可能です。Eメール(gijinza@gmail.comあて)で折れたカートリッジの状態を写真に撮って送っていただければ修理の見通しとともに、修理可能な場合は見積もりをいたします。
修理方法は当ホームページの「修理」を見てください。
高級な機種は針先(スタイラス)やカンチレバーが特殊な素材であることが多く、そのような機種については元通り修理することは不可能です。元通りの修理を希望される方は直接メーカーに問い合わせてください。私ができる修理は「とりあえず使える状態」にすることです。繰り返しますが、スタイラスチップやカンチレバーの違い、ダンパー劣化などから初期性能(購入時)には及びません。ある程度の性能でLPが普通に聴ける程度とお考えいただき、サブカートリッジとしてお使いいただくものです。
しかし、長く使って愛着のあるカートリッジを捨てるのは忍びないと思われるなら一度お問い合わせください。
私ができる修理内容と「回復できる程度や見込み」をお答えします。
DL-103/DENONの仲間は、カンチレバーの突き出し部分と周辺のガードとの距離があり、ダンパーやコイルが破損していなければ修理できる可能性が高いです。
折れたカンチレバーや針先が残っていれば折れた部分を整形して継ぎ金具(薄肉アルミパイプ)によって接着します。この場合は音質劣化も少なくなります。
折れたカンリレバー及び針先を失っている場合は新たに別のカートリッジからカンチレバー毎移植します。この場合は針先が変わってしまうため音質劣化は避けられませんが、普通にLPレコードを聴くには支障ない程度です。
MC-20/OrtofonはDL-103と同様で、比較的修理が容易です。DL-103との違いは、針先の形状が超楕円の無垢ダイヤモンドである点です。私たちのような素人には楕円の無垢針の入手は難しいため、楕円の接合針を移植するしかありません。このあたりが素人の限界だと思います。
しかし、比較試聴の結果はそれほど悲観することはないと感じています。私より耳の肥えた諸兄の評価を得たいところでもあります。
AT-33E/Audio-technicaは針が折れた時の衝撃でダンパーも破損していることが多く、針先交換だけでは使えるようになりません。AT-F3系はカンチレバーの突き出しと周囲のガードの距離が狭く、太いパイプで継ぐ修理方法はガードとカンリレバーの干渉で、大きな音の時に歪みます。
古いMCカートリッジで音が歪む障害があるものの多くは内蔵されている強力な磁石のところに磁性のゴミが付着してカンチレバーやコイルの動きを邪魔しているのが原因です。これらのゴミを取り除くことは極めて難しく、これまで成功していません。
MCカートリッジは高価なため、片チャンネルが断線しても捨てるのはもったいない。そこで、健全な方を使ってモノーラル録音LP専用に接続変更します。
モノーラル専用カートリッジは高価なものが多く、購入を躊躇しますが、この方法でも立派にモノーラル専用カートリッジとして役に立ちます。
狗肉の作ではありますが、愛着のあるカートリッジなら再生の価値大ですね。
モノーラル専用カートリッジは高価なので購入を躊躇っている方には是非オススメなのが汎用MM型ステレオカートリッジのモノーラル化。(写真はPC-110)
アンプのファンクションスイッチでモノーラル接続にするより、左右チャネルを直列に接続して左右両方に出力した方が音質が良いとされています。写真はPC-110をモノーラル化したもの。アンプによるミキサーよりスクラッチノイズが減少すると同時に躍動感が増したように感じました。
1970年代のレコードプレーヤーはその後の軽量ブームのカートリッジが軽すぎて針圧がかけられないことがあります。そんな時にスペーサー(銅、真鍮、アルミニウムなどの薄板)で適度な重量に調整します。
スペーサーはカートリッジとヘッドシェルの共振を抑える効果もあります。
取り付けネジをアルミニウムから真鍮やステンレス鋼に交換するのも音質を調整するのに効果的です。
折れた部分のカンチレバー(アルミパイプ)が潰れていればニードルなどで真円に近くなる様に整形する。
適当な交換針からスタイラスチップの付いているカンチレバをもらう。
よい針を移植すればよい音になる。
これが左の交換針はら外したもの。
このように適当な長さでカンチレバーのところを切断する。
切断したカンチレバーは潰れているので、ニードルを使って慎重に真円にもどす。
このようになればOK!
接着剤はゼリー状の瞬間接着剤を使用。
硬化したときの硬度が高いので音質劣化が少ない。
粘性があるので接着剤を必要な部分に置くことが容易である。
爪楊枝を使い、折れたカンチレバーのアルミパイプ先端外側に接着剤を塗る。
そこに、切り取ったカンチレバーを挿入する。
接着剤は必要最小限とする。
うまくカンチレバーを押し込んだらスタイラスチップの角度を確認し、ピンセットで角度を微調整。ゼリー状瞬間接着剤は固化するまで1分あるのでこの間に角度と突き出し長さを調整。
接着剤が固化するまで30分待ち、カートリッジに装着してテストレコードで試聴する。
視聴結果がよければ完成成功!
スタイラスが傾いているとスクラッチノイズが大きく、左右の音量差が出るので失敗。
音の大きいところでビビる場合は継いだカンチレバーが太くてボディーに接触している証拠。これも失敗です。
良いカートリッジに安物の交換針を移植するとつまらない音になってしまいこれもダメだと思います。ただし、ボロンなど特殊素材を使ったカンチレバーと針先は手に入らないので、こればかりは仕方ありません。
繊細過ぎて神経質な音色のカートリッジは針のグレードを下げることで聴きやすい音になることもあります。
良い針は、MUKUシリーズ、4ch仕様の高精度針(シバタ針が多い)、原音シリーズ、テーパードカンチレバーのシリーズなどです。